不動産の「共有」とは?関係を解消する方法
不動産を複数の人が「共有」している場合、共有者1人1人にはどこまでの権利が認められるのでしょうか?
共有状態では不動産を十分に活用できず、管理処分の方法について共有者同士の意見が合わないことも多く不便です。そんなとき、共有関係を解消する方法があるのでこれを機会に押さえておきましょう。
今回は、不動産の共有状態でどのようなことができるのか、また共有状態の解消方法について、東京・恵比寿の弁護士が説明します。
1.不動産の共有とは
不動産を「共有」しているとは、どのような状態なのでしょうか?共有は、複数の人が1つの不動産を共同所有している状態です。
土地や建物などの不動産は全体で1つの単位として数えますが、共有の場合、その1つの土地や建物の「全体」を複数の人が所有します。
土地の北側の半分をAさん、南側の半分をBさんなどとするわけではなく、すべての共有者が土地全体に対する権利を持ちます。
共有者には、不動産に対する権利の「割合」である「共有持分」が認められます。全員分の共有持分を足すと、「1(100%)」となります。
また、不動産を共有する人のことを「持分権者」言います。
共有持分の例を挙げると、AさんとBさんとCさんの3人が不動産を共有していて、Aさんの持分が3分の1、Bさんの持分が2分の1、Cさんの持分が6分の1になっているケースなどがあります。
2.共有状態で持分権者ができること
不動産を共有している場合、各共有持分権者ができることは以下の4種類に分類されます。
・使用
・保存
・管理
・処分
それぞれの行為について各持分権者の権限の範囲が異なるので、説明します。
2-1.使用について
共有持分がある場合、持分に応じて不動産を「使用」できます。
持分が少ないからと言って使用を制限されることはなく、どの持分権者も「不動産全体」を使用することが認められます。たとえば3分の1の持分しかない人が共有不動産の建物に居住したり事業所として使用したりしてもかまいません。
ただし、他の持分権者も使用を希望する場合には、話し合いによって調整する必要があります。
2-2.保存行為について
不動産の保存行為とは、不動産の状態を維持するために必要な行為です。たとえば建物が老朽化したときに修繕をしたり、不法占拠者を退去させたりすることです。
保存行為は、持分権者全員に利益をもたらすものなので、それぞれの持分権者が単独で行えます。他の持分権者の同意を得る必要はありません。
2-3.管理行為について
管理行為とは、不動産を改良したり、活用して収益を得たりする行為です。
たとえば、不動産の価値を高めるためにリノベーション工事やリフォームをしたり、賃貸に出したりするのが管理行為です。
共有状態の場合、各持分権者が単独で管理行為をすることが認められず、「持分の過半数」の同意が必要です。共有者の意思決定では、「人数」ではなく「持分割合」を基準に計算するので注意が必要です。
大きな持分を持った持分権者が管理行為に反対すると、実現は不可能となります。
2-4.処分行為について
不動産の処分行為とは、不動産の根本を変更したり売却したり抵当権等の担保権を設定をしたりする行為です。
処分行為は不動産に対する影響が大きいので、持分権者全員の同意が必要です。
たとえば、持分権者の考え方が合致せず不動産を活用できておらず、固定資産税の負担ばかりが発生するので不動産を売却してしまいたいと考えることがあります。そのようなとき、誰か1人でも売却に反対すると、不動産を売ることはできません。
3.不動産の共有状態を解消する方法
このように、共有状態のままでは活用もしにくく処分も難しいので、不動産が活用されないまま放置されてしまうケースが多いです。
そのような場合、以下のように共有状態を解消する方法があります。
・持分権者による買取り
自分の持分を他の共有持分権者に買い取ってもらいます。
・自分の共有持分を第三者に売却
自分の共有持分を、他の持分権者以外の第三者に売却します。
・不動産の全部を売却
持分権者全員が合意をして、不動産を売却して売却金を分配します。
・自分が他の持分権者の共有持分を買い取る
自分が他の共有持分権者の持分を買取り、不動産を単独所有します。
・持分を放棄する
持分を放棄して、他の共有持分権者に譲ります。
・土地を分筆して分ける
土地の場合、分筆によって、それぞれの持分権者の単独所有する土地に分けることができます。ただし分筆できない場合もありますし、分筆によって土地が狭くなり、利用価値が低くなる場合もあるので注意が必要です。
4.共有物分割請求訴訟について
他の持分権者との話し合いによって共有状態の解消について合意できない場合には、裁判所で調停や訴訟を起こすことにより、共有状態を解消することが可能です。
ただし、判決で共有状態を解消してもらう場合、どのような方法で解消するのか指定できません。希望を述べることは可能ですが、望んでいなくても競売による換価分割などが選択される可能性もあります。判決を避けるには、途中で和解して解決する方法があります。
不動産を共有していると、他の持分権者と意見が合わずトラブルになるケースが多いです。お困りの際には、東京・恵比寿の弁護士まで、お気軽にご相談下さい。