裁量労働制の残業代請求

・会社からは「裁量労働制だから残業代が発生しない」と言われているけれど、本当か?
・自分の場合、裁量労働制に該当するのだろうか?
・裁量労働制でも残業代が発生するケースはないの?

会社に残業代を請求しても「裁量労働制が適用されるので支払わない」と言われてしまうケースが多々あります

そのような場合でも、残業代が発生している可能性があります。

今回は、裁量労働制とはどのようなものか、また裁量労働制でも残業代を請求できるケースについて、恵比寿の弁護士が解説します。

残業している人

1.裁量労働制とは

裁量労働制とは、労働者が自分の裁量で労働時間や働き方を決めることができる制度です。

高度に専門的な仕事や業種の場合、定時に出社して定時に仕事を終えるという方式が非効率になると考えられます。そこで、本人の働きやすいように仕事ができるよう、労働時間を束縛しない裁量労働制を導入して、自由な働き方を認めているのです。

ただ裁量労働制の場合、労働時間の縛りがないので「時間外労働」の概念がありません。そこで裁量労働制によって雇用されている場合には、1日8時間以上働いても残業代を請求できません。

このような理由により裁量労働制の方は、会社から「裁量労働制なので残業代を支払わない」と言われてしまうのです。

2.裁量労働制が適用される職種と必要な手続き

ただし会社から裁量労働制を適用されていると言われている方の場合でも、実際には裁量労働制の適用場面でないことが多々あるので注意が必要です。

現時点において裁量労働制を適用できるのは、以下の2種類のケースに限られます。

① 専門業務型
② 企画業務型

以下でそれぞれの業務の内容と適用条件を説明します。

2-1.専門業務型

専門業務型とは、高度に専門的な業種の人を雇用するときに適用される裁量労働制のパターンです。

適用されるのは、以下の職種です。
・研究開発
・情報処理システムの分析や設計
・新聞やテレビ・ラジオなどの記者、編集者
・テレビや映画のプロデューサー、ディレクター
・デザイナー
・コピーライター
・システムコンサルタント
・インテリアコーディネーター
・ゲームソフト開発
・証券アナリスト
・金融商品の開発
・大学教授、研究業務
・公認会計士
・弁護士
・建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)
・不動産鑑定士
・弁理士
・税理士
・中小企業診断士

また専門業務型で裁量労働制を適用するには、労働組合や労働者の過半数の代表者との間で以下の内容を定めた労使協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

① 適用対象となる業務
② 業務遂行の手段や時間配分の決定について、会社が労働者に具体的な指示をしないこと
③ 労働時間の算定は、協定で定めること
④ 1日のみなし労働時間
⑤ 協定の有効期間
⑥ 健康・福祉確保措置

2-2.企画業務型

企画業務型の裁量労働制は、企業運営の根幹にかかわる重要事項について、立案や企画、調査分析、運営などの活動をする従業員に適用される制度です。

この場合、専門業務型よりもさらに厳しい要件が課されます。

具体的には以下の事項について「労使委員会」において5分の4以上の多数決を得て、労働基準監督署へ届け出る必要があります。また適用される労働者による個別的な同意も必要です。

① 適用対象となる業務
② 適用される労働者
③ 一日のみなし労働時間
④ 健康・福祉確保措置
⑤ 苦情処理措置
⑥ 対象労働者の同意を得ることと、同意しない労働者に不利益取り扱いをしてはならないこと。
⑦ 決議の有効期間と記録の保存期間

以上のような厳しい要件を満たしていない限り、裁量労働制は無効となります。

3.裁量労働制でも残業代が発生する場合

会社から裁量労働制と言われていても、残業代を請求できるケースは以下のような場合です。

3-1.そもそも裁量労働制を適用できないケース

まず、そもそも裁量労働制を適用できる職種ではないのに裁量労働制と言われて残業代を支払ってもらえていないケースが多々あります。専門業務でも企画業務でもない労働者の方の場合です。

このようなときにはそもそも裁量労働制が適用できず、一般の労働者と同様に残業代を請求できます。

3-2.裁量労働制の手続きがとられていないケース

2つ目は、企業側がきちんと裁量労働制導入の手続きをとっていないケースです。

たとえば専門業務型で労使協定を締結していないケース、企画業務型で労使委員会の多数決をとっていないケース、それらを労働基準監督署に届け出ていないケース、どの場合でも裁量労働制を導入したことになりません。

企業がきちんと裁量労働制導入の手続きをとっていないならば、対象の業種の方であっても一般の労働者と同様に、残業時間と1時間あたりの基礎賃金を計算して、割増賃金を請求することが可能です。

3-3.休日労働、深夜労働のケース

裁量労働制の方の場合、1日の労働時間はみなし労働時間によって決められていますが、深夜労働や休日労働をしたときの割増賃金は認められます。

そこで、夜10時から朝5時までの深夜・早朝に労働をした場合や休日に働いた場合には、労働基準法の定める割増率を適用して、割増賃金を請求できます。

 

現実には、裁量労働制が適用されないのに「裁量労働制」と言われて残業代を支払ってもらえていない方がとても多いです。疑問を持たれているならば、東京・恵比寿の弁護士がお話をお伺いしますので、まずは一度ご相談ください。

 

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