解雇の種類や方法
会社が従業員を解雇するときには、法律に従って進める必要があります。実は解雇には4つの種類があり、それぞれ要件や方法が異なります。
今回は、解雇の種類や進め方について恵比寿の弁護士が解説します。
1.解雇の種類
一口で「解雇」と言ってもケースによってさまざまで、以下の4種類の解雇方法が存在します。
・普通解雇
・整理解雇
・懲戒解雇
・諭旨解雇
「整理解雇」は「普通解雇」の1種であり、「諭旨解雇」は「懲戒解雇」に準じるものですから、大きく分ける「普通解雇」と「懲戒解雇」の2種類に分類することも可能です。
以下で、それぞれの解雇がどのようなものか、説明していきます。
2.普通解雇とその要件
2-1.普通解雇とは
普通解雇は、労働者に重大な非行がない場合に行われる、一般的な解雇です。懲戒解雇に該当しない通常の解雇は、基本的にすべて普通解雇となります。
例えば、従業員の能力不足や協調性の欠如、私傷病による長期の休業などの問題があるときに、普通解雇が検討されます。
普通解雇を行うときには、以下の要件を満たす必要があります。
2-2.解雇予告あるいは解雇予告手当の支給
雇用者は、労働者を解雇するとき、30日前に解雇予告をしなければなりません。労働者は解雇されると給料をもらえなくなって生活に支障が及ぶので、事前に予告することによって転職活動などの時間を与える必要があるのです。ただし30日前に解雇予告できなかった場合には、不足する日数分の「解雇予告手当」を支給すれば足ります。
解雇予告や解雇予告手当の支給をせずに解雇した場合、労働基準法違反となって使用者に罰則が適用されます。
ただし、解雇予告や解雇予告手当の支給がない解雇も、無効になるとは限りません。解雇権濫用にならない場合、あらためて解雇予告してから所定の期間が過ぎたら解雇は有効となります。
2-3.解雇権濫用にならないこと
普通解雇が有効になるためには「解雇権濫用にならないこと」が必要です。解雇権濫用とは使用者側が恣意的に労働者を解雇することです。解雇権濫用にならないためには、以下の要件を満たす必要があります。
・解雇の客観的合理的理由
解雇せざるを得ないと考えられる客観的で合理的な理由が必要です。単なる成績不良や多少の遅刻欠勤などでは解雇はできません。
・解雇方法の社会的相当性
解雇の理由がある場合でも、会社が解雇を回避するためのあらゆる努力を行ったけれど、どうしても解雇しか解決方法がない事情が必要です。
3.整理解雇とその要件
3-1.整理解雇とは
整理解雇とは、会社の経営状態が悪化したときに、会社を維持するためにやむを得ずに実施する解雇です。いわゆる「リストラ」の一環として整理解雇が行われます。
整理解雇は普通解雇の1種ですが、会社経営の建て直しのために行われるという意味で、一般の普通解雇とは異なる基準によって有効性が判断されます。
整理解雇が有効になるには、以下の4要件を満たす必要があります。
3-2.整理解雇の必要性
会社を建て直すために整理解雇が真にやむを得ないという状況が必要です。事業の縮小や一部の切り売り、設備投資の圧縮など他の手段によって対応できる場合には、整理解雇は認められません。
3-3.十分な解雇回避措置をとったこと
使用者側が、解雇回避のために努力を尽くしたことが必要です。例えば、配置転換や出向、希望退職者の募集などの他の方法を使い、できるだけ解雇を避けることを要求されます。
3-4.人員選定の合理性
解雇する人員を選定する基準が合理的である必要があります。
例えば、会社が気に入らない人を選定して整理解雇することは認められません。年齢や給与水準など一定の解雇基準を作り、平等に整理解雇を実施することが要求されます。
3-5.労働組合との誠実な協議
整理解雇を実施するに際しては、労働組合や労働者の代表者との間で誠実に協議し、理解を求める姿勢が必要です。
上記の4要件を満たした上で解雇予告や解雇予告手当などの措置も行い、ようやく整理解雇が認められます。
4.懲戒解雇とその要件
4-1.懲戒解雇とは
懲戒解雇は、労働者に重大な非行があるケースで認められる解雇です。
就業規則によって懲戒事由が定められており、かつ懲戒権の濫用にならない場合に懲戒解雇が認められます。
懲戒処分には戒告や減給、出勤停止や降格などいろいろな種類があり、解雇はもっとも重大な処分です。濫用にならないためには、従業員によほど重大な非行があったことが必要です。
例えば、会社のお金を横領して刑事事件となり有罪になったケース、2週間以上無断で欠勤したケース、セクハラやパワハラを繰り返して社内の風紀を大きく乱したケースなどで、懲戒解雇が認められやすいです。
4-2.懲戒解雇の特殊性
懲戒解雇する場合には、事前に労基署に届け出ておくことによって解雇予告や解雇予告無しでの解雇できます。また一般的に退職金を不支給にしたり減額したりする例が多数です。
懲戒解雇された場合にも失業保険の受給は可能ですが、給付開始できる時期が一般の労働者よりも遅くなります。一般の労働者の場合には7日間の待機期間後すぐに受給開始できますが、懲戒解雇された場合にはさらに3か月間待たないと失業保険が支給されません。
5.諭旨解雇とは
諭旨解雇とは、懲戒事由がある場合に会社が労働者に対して自首退職を促し、自ら辞職してもらう解雇方法です。
懲戒事由があると基本的には会社が従業員を懲戒解雇しますが、そうなると退職金も支給しませんし解雇予告手当なども払われないケースが多数です。失業保険の受給時期も遅くなり受給期間も短くなります。
そこで自主的に退職を促し、退職金を一部または全部支給するなど労働者の便宜を図ります。このように穏便に解決することによって懲戒解雇に関するトラブルを防げるという会社側のメリットもあります。
以上が4種類の解雇方法です。今後解雇する際やされた場合の参考にしてみてください。不当な解雇をされた場合は弁護士にご相談ください。