意匠権侵害警告に対して非侵害を主張し、意匠権者に権利行使を断念させた事例
事案の概要
E社は、布部分を折り畳んで中に収納するとポーチ大になり、そのボーチの周囲のファスナーを開けて、畳んである布を広げるとボストンバッグになる構造のバッグを販売していました。ところが、これに対して、S社から意匠権侵害警告が送られてきました。E社は、この問題に適切に対処するために当事務所を訪問されました。
解決までの流れ
当事務所は、意匠公報を入手し、E社に同じような構造の折り畳み式バッグを入手してもらいました。そして、S社意匠の中で、既存のバッグにはない新規な部分であって、見る人の注意を強く惹く部分(要部)を入念に検討しました。これにより、S社意匠の要部は、ボストンバッグ側面中央部水平方向に、インナーポケットのファスナーが取り付けられている点であると判断しました。これに対して、E社バッグにはバッグ側面にファスナーがないので、S社意匠とは非類似であり、結局、非侵害であるとの結論に至りました。
この結論に基づいて、S社に対し、上記の分析内容を伝えつつ意匠権侵害を否定し、警告に服さないことを明言しました。これに対して、S社から繰り返し反論が出されましたが、その都度こちらの見解を伝えて再反論しました。警告から3か月後、S社からの通知がなくなり、その後も動きはありませんでした。こうして本件侵害紛争は事実上終息しました。
コメント
意匠の類否判断においてポイントとなるのは、要部認定です。本件において、当事務所が立脚したのは、修正混同説(創作的混同説)と言われる手法です。