離婚の財産分与において、オーバーローン不動産の処理を適切に実行した事例
事案の概要
XさんとY氏は結婚後、ペアローンを組んでマンション(以下「本件マンション」という)を購入し、暮らし始めました。
数年後、XさんとY氏は性格の不一致等を理由としていざこざが絶えなくなり、Y氏が本件マンションから出ていく形で別居が始まりました。
別居開始から数ヶ月して、XさんはY氏に対して離婚調停を申し立てました。離婚調停に臨むにあたり当事務所の弁護士がXさんの代理人に就任しました。
調停の場で、Y氏から本件マンションについて、「現在、自分は居住していないのに住宅ローンの負担を強いられている。これには納得ができない。」「自分は今後居住することはないのだから自分をローンの当事者から外してほしい」との主張がなされました。
解決までの流れ
Y氏の主張に関し、担当弁護士は、Xさんの収支状況と本件マンションの評価額を調査しました。
調査の結果、Xさんはそれなりの収入を得ており、本件マンションのローンを単独で返済できるだけの資力を有することが判明しました。
また、本件マンションの評価額は、住宅ローン残高を下回るいわゆるオーバーローンの状態(マンションを売却しても借金が残る状態)にあることも判明しました。
これを踏まえ、担当弁護士は、①本件マンションは財産価値がない不動産であるから、Y氏は財産分与の一環としてXさんに対し本件マンションの持ち分を無償譲渡する。②本件マンションには今後Xさんが単独で居住する、③持ち分を譲渡いただいた代わりに、住宅ローン(ペアローン)についてはXさんの単独契約となるように金融機関に働きかけて巻き直す、旨をY氏に伝えました。
次に、担当弁護士は、④住宅ローン債権者に対し、本件マンションの住宅ローンをXさんY氏のペアローン契約からXさんの単独のローン切り替えていただくよう働きかけました。
最終的に上記①~④について全て達成することができ、XさんY氏の財産分与合意が成立しました。
コメント
Xさんは、今後の住宅ローンの返済について単独で返済し得るほどの十分な収入を得ておりました。
継続して住宅ローン返済ができるのであれば、オーバーローンのまま売却して残ローンが残るという手法を選択するより住宅ローンを払って居住を継続した方がはるかに賢明と言えます。