婚姻費用分担額の算定において、不動産収入の加算を認めなかった事例
事案の概要
Mさん(夫)とSさん(妻)は夫婦仲が悪化し、Sさんが家を出る形で別居するに至りました。Mさんは、当事務所に依頼して離婚を求める調停を申し立てました。他方、Sさんは、婚姻費用の分担を求める調停を申し立てました。
Sさんは、婚姻費用分担額の算定に関して、Mさんには給与収入のほかに不動産収入があるから合算すべきであると主張しました。
解決までの流れ
事件は調停から審判に移行しました。不動産収入に関し、Mさんは、確かに不動産収入はあるが、ローン支払と経費支出を控除すると不動産所得はないと主張しました。これに対して、Sさんは、証拠がないとして経費支出を否認しました。
裁判所は、不動産を維持管理するためには相応の経費が発生するとして、確定申告書どおりの経費支出を認め、ローンと経費を控除すると不動産所得は認められないとし、Mさんに対して、給与収入のみに基づく婚姻費用分担額の支払を命じました。
コメント
相手方配偶者が不動産を所有し、収益を得ている場合、その収益を収入に加算することは当然ですが、必ずしも収益を得ているわけではありません。ローン支払や経費支出があるからです。経費支出を主張する場合、その一つ一つの証拠(領収証など)がないときでも、確定申告書などにより一定の経費を認めてもらうことができます。