合弁事業を解消するために、保有株式を全部相手方に譲渡した事例
事案の概要
精密機器を製造販売するR社は、K社との間で、50%ずつを出資して合弁会社Bを設立し、R社製品のS国内販売事業を開始しました。Bの代表取締役にはK社のオーナーであるH氏が就任しました。しかし、B社の業績は低迷を続け、好転する目途も立ちませんでした。R社は事業からの撤退を決断し、K社に対して合弁解消を申し入れました。K社も申入れに応じました。
R社は合弁事業からの撤退の進め方について、当事務所に相談に来られました。
解決までの流れ
当事務所は、まず、B社を解散して清算することをH氏に申し入れました。しかし、H氏は解散には消極的で、会社自体は存続させたいという意向でした。そこで、当事務所は、H氏に対し、R社が保有するB社株式を全部K社へ譲渡することを提案したところ、H氏はこれを受け入れました。
R社とK社との間で株式譲渡契約が締結されましたが、その中で、R社が不利益を被らないよう、B社による競業の禁止、R社の名称やブランドの使用禁止、秘密保持義務などが盛り込まれました。
コメント
合弁事業を開始する場合には、将来、合弁事業を解消する事態も起こりうるということを見越して合弁契約を締結すべきです。合弁解消事由(デッドロックの発生など)、解消後の措置(清算か株式買取請求か株式売渡請求か、競業の可否、名称やブランドの使用継続の可否など)について取り決めておくことが必要です。
この事案では、合弁契約上このような約定がなかったので、もしH氏が合弁解消そのものを拒否したとすると、R社には単独で法的に合弁解消を実現する手段がありませんでした。