親会社の事業の一部を、簡易・略式吸収分割によって子会社に移転した事例

事案の概要

O社は、その事業の一部に、ふ化から中間養殖の前までを行う養殖事業部門を持っていました。一方、O社の完全子会社であるS社は、事業として中間養殖から海面養殖までを行っていました。O社は、養殖事業の効率性を高めるために、事業をS社に統合することを決定し、そのための法的手段を当事務所に相談されました。

解決までの流れ

当事務所は、O社の養殖事業を会社分割によりS社に移転すること(吸収分割)を提案し、O社の了解を得ました。S社がO社の完全子会社であること、及び承継する資産額がO社の総資産の20%以下であったことから、双方の株主総会を省略して簡便に事業を移転することができました。

コメント

会社分割とは、分割会社(本件のO社)が、事業に関して有する権利義務を分割し、他の会社(承継会社、本件のS社)又は新たに設立する会社(設立会社)に承継させる手続をいいます。会社分割により、承継会社等は、分割会社の権利義務や契約上の地位等を包括的に承継します。事業譲渡と異なり、権利義務や契約上の地位等について個別の承継手続きを必要としません。ただし、会社分割では、債権者の異議手続き及び労働者の異議申出手続きを取らなければなりません。

会社分割では、原則として、分割会社、承継会社双方の株主総会の承認が必要ですが、S社はO社の完全子会社でしたから、無対価にすれば略式分割としてS社の株主総会は省略可能でした。また、移転する養殖事業の資産額はO社全体の20%以下であったため、簡易分割としてO社の株主総会も省略可能でした。

かくして、O社は、その養殖事業をS社に移転することができました。

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