帳合取引の買主に対する売買代金請求が全額認められた事例
事案の概要
T社は鋼管の製造販売を業としています。T社は、G社からの注文を受けて同社に鋼管を販売することになりました。しかし、G社には信用力がありませんでしたから、T社は、G社に対して、中間にS社を介入させ、形式上は、T社はS社に販売し、S社がG社に再販売するという帳合取引を要求しました。G社はこの要求を受け入れました。
こうして取引が始まり、T社は鋼管を直接G社に納品しました。しかし、期日になっても代金の支払はありませんでした。T社の請求に対し、S社は、目的物を受領していないという理由で支払を拒否しました。
T社は当事務所に相談に来られました。
解決までの流れ
当事務所は、S社に対する訴訟を提起しました。S社は同時履行関係を主張しました。当事務所は、T社とS社の取引はいわゆる帳合取引であって、G社に対する与信のためにS社が介入することを合意した、したがって、T社がG社に直接目的物を引き渡すことで、S社に対する引渡しを了したことになる、と主張しました。S社は帳合取引の合意を否認しました。
証拠調べの結果、T社とS社との間で帳合取引の合意が成立したことが認められ、T社の全面勝訴となりました。
コメント
帳合取引は、最終の買主に信用力がない場合に、売主との中間に商社などが介入する一種の金融取引です。介入する者にとっては転売差益(中間マージン)が収入となります。
本件の場合、介入者であるS社に対する意思確認が十分ではなかったことが訴訟にまで発展する原因であったと思われます。