商標権侵害警告に対して非侵害を主張し、商標権者に権利行使を断念させた事例
事案の概要
E社は、猫の足の裏(肉球)を模した商品(おもちゃ)に紐を付けたキーホルダーを「ぷにぷに肉球」というネーミングで販売していました。ところが、これに対して、A社から商標権侵害警告が送られてきました。使用料を払えというのです。
E社は、この問題に適切に対処するために当事務所を訪問されました。
解決までの流れ
商標公報によると、A社は、健康玩具について「肉球」という登録商標を保有していました。指定商品も同一、標章も同一で、一見すると商標権侵害に当たりそうです。しかし、E社の商品は、肉球の形態、触感をそっくり真似たおもちゃであり、肉球というほかに適切な呼び方がありません。当事務所は、E社の商標は「商品の普通名称を」「普通に用いられる方法で表示する商標」であるから、A社商標権の効力は及ばず、非侵害であるとの結論に至りました(商標法26項1項2号)。
この結論に基づいて、A社に対し、商標権の侵害を否定し、警告には応じないことを伝えました。これに対して、A社から何度か反論が送られてきましたが、その都度こちらの見解を伝えて再反論しました。警告から4か月後、A社からの連絡はなくなり、紛争は事実上終息しました。
コメント
肉球という普通名称について商標権を取得すると、肉球という呼称を独占できる強い権利であるかのように見えますが、他者が、肉球を模した物を肉球と呼ぶ限り、商標権の侵害にはなりません。じつはあまり強いとはいえない権利なのです。