売主が売買契約を解除する前に、転買主が荷渡指図書を倉庫業者に呈示していても、それのみでは解除前の第三者とは認められなかった事例
事案の概要
T社は鋼管の輸入販売を業としています。T社は、G社から注文を受けて同社に鋼管を販売することになりましたが、G社には信用力がありませんでした。そこで、T社は、T社とG社との中間にS社を介入させ、形式上は、T社からS社に販売し、S社からG社に転売するという方法を取ることになりました。現物の引渡しに関しては、Tが倉庫業者宛てに発行した荷渡指図書をS社に交付し、S社はその荷渡指図書と自社発行の荷渡指図書をG社に交付するという方法でした。こうして取引が始まりましたが、G社が支払を遅延したため、S社はT社に対する支払を拒否しました。T社はS社との契約を解除しました。ところが、G社は、目的物の引渡しを要求しました。解除前に購入し、荷渡指図書を倉庫業者に呈示していたから、解除前の第三者である(民法545条1項但書)という理由です。
解決までの流れ
理論的には悩ましい問題があります。G社は解除前に対抗要件を備えた第三者かという点です。しかし、倉庫業者から見ればT社はお得意様ですから、T社が倉庫業者に対して指示すれば、倉庫業者はG社に対する出庫を拒否します。本件でも、倉庫業者はG社に対する出庫を拒否しました。結局、本件では、S社もG社との契約を解除し、この取引は終了しました。
コメント
転買主が、売主及び転売主から2通の荷渡指図書を受け取り、これらを倉庫業者に呈示した後に売主が買主=転売主との契約を解除した場合に、荷渡指図書を解除前に呈示したからといって、それだけで転買主が解除前の第三者に該当する、というような慣習や慣行はないと考えられます。