外注取引先から報酬を得たことが利益相反行為に該当すると判断され、依願退職するに至った事例
事案の概要
Yさんは、会社の取引先であるH社から頼まれて経営上の相談に乗ってきました。最初は回数も少なく不定期でしたが、H社社長の海外出張に同行したことがきっかけで回数も増え定期的になったことから、相談料をもらうようになりました(ちなみに会社は副業を禁止していました。)。YさんはさらにH社との関係を深め、Yさん自身が会社の担当者としてH社に対して発注した取引について、YさんがH社の業務をサポートし、H社からその対価を得るようになりました。
しかし、このことが会社に発覚したことから、Yさんには背任の嫌疑がかけられ、自宅待機を命じられました。Yさんは、会社に対する防御を当事務所に依頼されました。
解決までの流れ
当事務所では、会社に対して受任通知を行い、Yさんから事実関係を聴取しました。ついで、会社に対して、どのような事実を背任と認識しているかを照会しました。その回答を踏まえて、当事務所は、会社に対して、Yさんのしたことは利益相反取引ではあるが、会社に損害はなく、背任の意図もなかったと、弁明しました。
その結果、会社との間で、Yさんは依願退職する、会社はYさんを出勤停止1か月の懲戒に処する、という形での解決が成立しました。
コメント
もし、YさんがH社に対して代金額を水増しして発注し、H社からキックバックを得ていたとしたら、間違いなくYさんは背任と断じられ懲戒解雇されていたでしょう。しかし、代金の水増しはなく、Yさんが得た対価も労働の対価であったという事実を会社に認めさせ、懲戒解雇を避けることができました。