不貞慰謝料請求訴訟において、慰謝料請求を放棄する和解が成立した事例
事案の概要
AさんとBさん夫婦はともに医師です。Aさんは地方の病院へ単身で赴任しましたが、その赴任先の病院で看護師Cさんと不貞の関係を持ち続けました。Aさんが赴任先から戻った後、Aさんの不貞を知ったBさんは、Cさんに対して慰謝料請求訴訟を提起しました。
これに対しCさんは、Aさんが妻帯者であるとは知らなかった、それどころかAさんとCさんは婚約していた、Aさんから婚約を破棄された自分こそ被害者だと反論しました。AさんはBさんに対し、不貞は事実だが婚約などあり得ないと弁解し謝罪しました。
Bさんは、初めのうちはAとの離婚も考えると言っていましたが次第に怒りが鎮まり、Aさんとの婚姻関係を継続することに決めました。
解決までの流れ
訴訟では、Aさんが証人尋問を受けることはありませんでしたが、Cさんの同僚がCさん側の証人として出廷するなど人証調べまで進み、判決は目前でした。
しかし、裁判所はCさんの不法行為責任は否定できないが、Aさんも共同不法行為者として責任割合に応じた求償義務を負うから、もしCさんがAさんを訴えるといつまでも事件全体が解決しないとして、CさんはBさんに謝罪する、Bさんは金銭請求を放棄する、CさんはAさんに金銭請求しない、CさんもBさんも今後一切関わりを持たない、という和解案を提示しました。
この和解案をBさん、Cさんが受け入れ事件は解決しました。
コメント
不貞行為があっても、夫婦が婚姻関係を継続する場合には「財布は一つ」状態が存在するので、金銭移動の循環を避けるという考え方により、本例のような、金銭の授受なしに紛争を解決することが可能です。