婚姻費用分担額の算定において、義務者の収入が不明なため、過去の分担額と同額の婚姻費用分担額とする調停が成立した事例
事案の概要
Aさん(夫)とBさん(妻)は夫婦仲が悪化し、Bさんが子どもを連れて家を出る形で別居するに至りました。Bさんは離婚を求める調停を申し立てると同時に、婚姻費用の分担を求める調停を申し立てました。前者は不成立、後者は審判に移行しました。
Aさんは、元々サラリーマンでしたが、子供と会う機会を増やすために脱サラして起業しました。しかし、立ち上げた会社は軌道に乗ったとは言えない状態でした。Aさんは自分の役員報酬は決算書記載の月額10万円と主張しました。しかし、裁判所は会社の経費支出にはAさんの生活費支出が含まれているとしてこの主張を認めませんでした。かといって他に収入認定の証拠はありませんでした。
解決までの流れ
裁判所は、Aさんが脱サラする以前の給与収入と同程度の収入を得ていると仮定し、その収入額に基づいて算定した婚姻費用分担額を本件の分担額とすることを提案しました。つまり過去の分担額と同額です。AさんもBさんも、この提案を受け入れました。事件は審判から調停に移行し、この内容で調停が成立しました。
コメント
Aさんは当初、裁判所の提案を受け入れることに消極的でした。しかし、Bさんは離婚を求めていたので、さっさと離婚協議をまとめれば婚姻費用分担義務はなくなります。Aさんはそう考え、婚姻費用分担調停を成立させるという選択をしました。